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(27)最後まで使いきる(チューブチャレンジ) [介護]

【1】はじめに
10年程前、難病ALSの研究を支援するための「アイス・バケツ・チャレンジ」と言うバケツで冷水を頭からかぶる世界的に盛り上がった運動がありました。今回の「チューブチャレンジ」もごく限られた世界かもしれませんが、同様に広まることを期待しての命名です。
この題名からその内容を想像してみてください。チャリティー的なことではありませんし、本ブログの主題でもある介護技術の工夫でもありません。しかし、介護現場ではこの様な場面に少なからず遭遇すると思われ、本ブログで紹介することにしました。

それは2023/9/8、訪問看護のある看護師のひと言がきっかけです。私は入浴後に、効果のほどはわかりませんが、顔にクリームを塗って頂いています。その際に看護師が私に向かってこう言いました。「このクリーム、もう無いわ」。私は新しいのを準備してもらわなければと思っていましたが、次の使用時に妻がそのチューブから絞り出すことができたのです。「なんだ、まだまだ絞れば出てきそうじゃん」ということで、介助して頂く方々に、「もう出せません」というまで頑張っていただく競技を考えました。その競技名が『チューブチャレンジ』です。


【2】競技ルール
ルールは単純明快、入浴後に塗布するクリームをチューブから絞り出せなかったチームが負けです。但し、次のチームも同様に絞り出せなければ、両者引分けとします。
試技者は、クリームを指先に吐出させ、顔に少しでも塗布できればクリアです。
チューブをハサミ等で切断するのは禁止です。チューブは原形をとどめていなければなりません。

今回の競技に使用するクリームは図1の通りです。

図27-1.jpg


マンダムのLUCIDO 20g入り。白色クリームが樹脂製チューブに入っています。週3回の入浴後にこのクリームを指先に取り、必要箇所に塗布して頂きます。審判は被介護者である私が務めます。


【3】エントリーチーム
入浴介助をしていただいている2つの事業所と妻の合計3チームが参戦です。
①事業所T(水曜日)
②事業所A(金曜日)
③妻Y(月曜日)

事業所チームT、Aのチームメンバーは固定ではなくローテーションでいろいろな方が来られますが、少なくとも1名以上の男性が含まれています。その意味で妻Yは不利だと言えます。


【4】競技結果
2023/9/8事業所Aの看護師さんの発言を開会宣言とし、9/11の妻Yから実質的に競技開始です。この頃の試技者はチューブを少し振るだけで容易に絞り出せていました。しかし、競技開始から3週間、のべ9人の挑戦者が次々に成功すると、さすがに絞り出せるクリーム量が減ってきました。次の挑戦者が「まだ出たの?」と言いつつも、強く、長い時間チューブを振ることで何とか絞り出せる状態です。さらに絞り出す為には、チューブの振り方が大きく影響します。

やはり、強く振ることが可能な男性が有利でした。10/30には妻Yがギブアップです。これで競技終了かと思いきや 次の挑戦者、事業所Tの男性が理にかなった振り方で大量に絞り出すことに成功しました。この時点で妻Yの敗退確定です。

ここからは事業所TとAの一騎討ちです。両者共に力強い振りで、なかなかの熱戦となりました。まだ冷房を使用していた9月上旬からスタートしたチューブチャレンジは、少し寒くなって暖房を使い始まる時期になっても続いていました。

11月中旬ともなると前のチームが絞り出しに成功したことに驚きつつも、負けるわけにはいかないと闘志を燃やして挑戦される方ばかりでした。少しの空き時間にもチューブを振り、何とかしてクリームを絞り出そうと必死でした。

競技開始から2ヶ月以上経過して漸く限界に近づいたようです。11/22事業所TのNさんが図2に示す液状のモノを指先になんとか絞り出しました。

図27-2.jpg


指先に出して直ぐに写真を撮ればよかったのですが、ちょっともたついている間に体温で溶けたようです。とりあえず『審議』として、金曜日の事業所Aの結果を待つことにしました。Aがこれ以上の量を出せればAの優勝、同程度で引分けとし、長らく続いたチューブチャレンジを終了することにしました。

この2日後、事業所Aの最終試技が始まりました。キャップを外してチューブ内を覗き込まれた試技者Yさんは、簡単には絞り出せないことを直ぐに悟られたようです。ずっと振り続けるにも体力的にも時間的に限度がある中、あるアイディアを思いつかれました。それは、チューブを温めてクリームの粘度を下げることです。そうすれば、同じように振ってもクリームが絞り出せる可能性が高くなるのです。

折しもその日は寒く、床暖房が入っていたのです。試技者Yさんはチューブを床面に置いて温めてから、高速に振られたのです。そうして絞り出した結果を図3に示します。

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図27-3.jpg


指先には白いクリームがはっきりと確認できます。図2の事業所Tと比較しても明らかに吐出量が多く、事業所Aの勝利が確定しました。床暖房で温めることはルール違反ではありません。事業所Tも浴槽で温める方法を取っていれば、結果は違っていたかもしれませんね。ここまでくると勝利への執念の差が出たように思います。

この勝敗が確定した直後、チューブを切断して内部を観察してみました。図4に示すように、内部は非常に綺麗です。こんな状態にあっても、よく絞り出せていたものだと思います。キャップ側の黒い部分に付着するクリームを如何に出すかが勝敗に大きく影響していたようです。この部分にもう少し勾配をつけた形状をメーカーさんにお願いしたいです。

図27-4.jpg



【5】講評
今回のチューブチャレンジでは9/11〜11/24の期間中のべ30回の挑戦が為されました。皆さんが積極的に取り組んで頂いたおかげで非常に盛り上がりました。
チューブ内を覗き込んでもクリームを確認できず、本当に出てくるのだろうかと思いながらも試技に挑んで下さった皆様、本当にありがとうございました。

介護の現場では、色々なチューブ入りのクリームを使用する場面があります。今回のような樹脂製チューブなら、最後まで無駄無く使い切れることを実証することができたのです。
一方、金属製チューブの場合、今回のように競技として極限まで使い切ることは難しそうです。それは、チューブ形状が復元しない上に、折れ曲った箇所が裂けてしまうことです。さらに、チューブの絞り方も人それぞれであり、今回のような競技には向いていません。もし、金属製チューブを用いて同様の競技を催すとするなら、参加チームごとに新品を用意し、残量を計量して競うしか無いと思いますが非現実的かもしれません。

今後もチューブチャレンジのように、介護現場が楽しくなる企画を考えていきたいと思います。また、お勧め企画があれば教えていただければ助かります。よろしくお願いいたします。


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