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(23)ALS患者が外出して参議院選挙に行ってきた。 [ALS]

手足を動かすことができない障害者であっても、投票する権利があります。当然ALS患者でも投票することができますが、外出して投票するには色々な苦労が伴います。今回、2022年7月10日の参議院選挙、期日前投票に行ってきましたので、その様子を紹介します。

7月10日の投票は近所の投票所で行われますが、私が行くとなると次のような問題があります。
・自宅から投票所までは登り坂のため、介助型車椅子で行くのは不可能。
・駐車場は無く、坂道の途中に駐車しての車椅子への移乗は危険。
・投票所に入るにもスロープが急勾配な上に長い。
・雨天の場合、雨風を避ける場所が投票所に辿り着くまで無い。

以上の理由から、市役所で投票できる期日前投票に行くことにしています。市役所は障害者駐車場が建物近くにあり、建物内もバリアフリーで障害者トイレもあるのです。さらに期日前投票では、体調や天候を考慮して投票日時を選べるメリットもあります。また、選挙公報は全てWeb上で読むことが可能です。

選挙とは直接関係はありませんが、今回は自家用車への乗り込みから出発までの段取りを少し紹介します。この段取りは、自家用車で外出する際はいつも同じです。

自家用車は「助手席リフトアップ」と呼ばれる福祉車輌です。助手席が外向きに回転し、電動で車外に下りてくるタイプです。助手席を車椅子から移乗しやすい高さに調整し、横につけた車椅子からリフティ・ピーヴォ(https://www.aun.blue/lifty-pivo/)を使って移乗させてもらいます。助手席の足置きを開いて足を載せてもらい、介助者がボタンを押すと本来の助手席位置に電動で戻ります。シートベルトを締めて、さぁ出発ですとはいかないのがALS患者です。

シートベルトは大きな加速度、つまり急激に大きな力が身体にかかる場合には効果的ですが、ゆっくりとかかる力には役にたちません。そのため、健常者では何でもない状況でも身体が座席からはみ出して傾いたりします。しかも自分では元の体勢に戻せないので、走行中は危険です。

そのため身体を固定するベルトをシートベルトに追加して締めます。シートベルトのように身体を動かす余裕があると効果が無いので、まさに縛り付けられるイメージですが安全のためです。追加ベルトは何でも良く、私の場合はAmazonで購入した2000円の『胴当てベルト』を使っています。

これまでの経験から、次のような場合に身体が傾く危険があります。
① 急坂を下る。
② 左右に曲がる。
③ 踏切や歩道等の段差を乗り越える。
④ 停車する。
⑤ 車線変更して加速する。
⑥ 駐車場等で切り返し操作をする。

尚、車のスピードにも依存するので、前記の全てがいつも危険な訳ではありません。ただ、大きな加速度を伴う運転操作には、身体が振られる要素があるのは間違いありません。

追加のベルトを締めた後、車椅子を畳んで積み込んでようやく出発です。市役所には数分で到着し、障害者用駐車場に入ります。そこで車椅子に移乗させてもらい、市役所玄関に向かう歩道に進みます。路面と歩道の段差は5cmほどありますが、車椅子が通行する場所のみをセメントで埋めてスロープを形成してあります。しかし、スロープが短く急勾配な上、劣化もあり完全に段差解消とはいきません。車椅子で乗り越える際の抵抗が少なくなるようにさらに緩い勾配のスロープ形状、定期的なメンテナンスをお願いしたいです。

というのも、ちょっとした段差でも車椅子には障害になるのです。特に車椅子前輪は車輪径15cm程度と小さく、5cmの段差は3分の1の高さになります。身長150cmの人が50cmの段差を乗り越えるようなものです。自走式でなく介助型車椅子では前輪ほどではないものの後輪も小さく、段差を乗り越える際の介助者負担は大きくなるのです。

段差を乗り越え歩道に入ると、後はスムーズに期日前投票所に辿り着きました。会場ではすぐに係員が近寄って来られ、サポートが必要か否かを尋ねられました。サポートが必要だと伝えると、投票券裏面の記入を確認され、問題なければ次に進みます。しかし、ここまで連れてきてくれた妻がそのまま車椅子を押し、代筆して投票するのはダメなようです。

ここからは係員(A)が車椅子を押して名簿の確認に進みます。名前を告げ、確認が済むと選挙区の投票用紙を渡されます。しかし、手を動かせないので車椅子を押されている係員(A)が受取ました。車椅子を記入テーブル前まで押してもらいますが、この方が記入するのもダメなようで、さらに別の係員(B)が呼ばれます。

記入担当の係員(B)に投票用紙に何と書くかを口頭で伝えます。係員(B)はテーブルで記入し、私に見せてこれで良いかを確認します。そのまま投票箱に入れるまでを私の目の前で行いました。この間、係員(A)は車椅子の移動操作をしてくれています。次に渡された比例区の投票用紙も同じ流れです。投票完了後に出口まで車椅子を押してもらい、先に投票を終えて待つ妻にバトンタッチです。

この一連の中での問題に感じたのは、車椅子を押してくれた係員(A)が私の投票内容を見聞きしていることです。本来なら代筆した係員(B)以外、私の投票内容を知ってはいけないのだと思います。記入内容の伝達方法、確認方法については改善の余地がありますね。

ともあれ、以上のように自書できなくとも無事に投票を終えることができました。
ALS患者の投票は、家族ではなく係員の代筆だったんですよ。

ALS患者が外出するとなると本人だけでなく介助者の負担も大きいですが、たまには外出して太陽の光を浴びるのも良いと思いました。妻に感謝です。

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