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(14)被介助者のストレス [介護]

手足の動かせない障害者にとって、日常生活を支えて下さる方々には感謝しかありません。しかし、日々介助を受ける中で、辛いなとストレスに感じることがあります。介助して下さる方が良かれと思ってされていることでも、介助を受ける側がストレスに感じることが少なからずあるのです。そこで今回、介助する側では気づきにくい被介助者のストレスを紹介したいと思います。

私の主な症状は次の通り。(2021年5月現在)
・足は少し動かせるものの、上体を支えて貰っても立位保持が困難。
・指が少し動かせる以外は、腕、手は動かせない。
・体幹の筋力は弱いながらも残っており、着座時の前傾姿勢や座位保持は可能。

この様な症状の私が介助を受ける場合、ほとんどの介助者は転倒、転落を心配されます。例えば、椅子やベッド縁に座って着替えをする場合や、入浴時のバスリフトに着座時などです。私が転倒しないように、私の肩に手を添えらます。ところが、これが大きなストレスなのです。これまでの介助者の皆さんは、これがストレスになるとは想像すらできなかったようです。そこで今回、この添えた手が何故ストレスになっているのかを説明したいと思います。

今の私は、何とか座位を保持できます。それを図示すると図1のように前後の力が均衡した状態になります。

14-図1.jpg


この前後の力は腹筋や背筋などにより作り出されています。図1では分かりやすいように、前後にそれぞれ大きさ1.0の力が加わって釣り合っている様子が描かれています。尚、この力の大きさは説明の便宜上設定したもので意味はありません。また、左右の力(図の表示面垂直方向)も均衡を保っていますが、今回は前後の動きに限定して考えるため省略します。

この状態で、体が前に倒れないように肩の前側に手を添えられるとどうなるでしょう? それは図2に水色の矢印で示すように体の後方に向けた力がかかることになります。

14-図2.jpg


ここでは大きさ0.5の力が加えられています。(この数字に意味はありません。)この力は非常に弱いものかもしれませんが、私自身の筋力で均衡を保って座位を保持している状態に追加されたものです。この追加された力を含めて座位を保持するためには、逆方向に同一強度の力が必要です。健常者であればこの力を自分の筋力から出せます。すなわち、前方向に1.0の力に加え、肩の位置で0.5の力を出すことで簡単に座位を保持できます(図3)。

14-図3.jpg


ところが、私の場合はその力を自分の筋力から出すことができません。すると、どうなるでしょうか?物理学的には体が後方に傾くことになりますが、実際には理論通りにはなりませんでした。私の体感では、体を支えようと前向きの力を出そうとするのですが、力尽きてしまい前方に倒れることになりました。そして、添えられた手にもたれきってしまう状態になりました。
逆に後方に倒れないように肩の後ろ側に手を添えられた場合はどうなるでしょう?
姿勢を維持するためには、後方に向けた力を自分の筋力から発生させなければなりません。しかし、先ほども述べたように、自分ではその力を出せずに力尽きてしまいます。前方に倒れるか、後方に倒れるかはその時の姿勢に依るようです。しかし、多くの場合は、首を前方に垂れていることや、上体も前屈みになっていることから前に倒れる場合がほとんどです。

いづれにしても、軽く手を添えるだけのことが、体を支えている力の均衡を崩すことになることを理解頂けたと思います。健常者なら何でもないことでも、体が倒れて座位を保持できなくなることは大きなストレスなのです。

それでは、どのようにすればストレスを感じることなく、安全に介助して頂けるのでしょうか。均衡を保つ力を自分の筋力から出せない以上、手を添えて体を支えるためには、物理学的には図4に示すように垂直方向に力をかけて体を支えるしか無いように思えます。

14-図4.jpg


しかし、姿勢によっては前後方向の成分が生じるので、なかなか難しく非現実的だと思います。結局、手を掛けないで、転倒に備えてもらうしか方法は無いと思われます。。。
何か工夫されている方が居られるなら、是非ご教授ください。

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