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(18)移乗機 [介護]

手足の動かせない障害者にとって、移動するということは大きなエネルギーを必要とします。ベッドで横になっている状態から起き上がってリビングの椅子に座る、トイレに行く、浴室のシャワーチェアに座る、外出のために車椅子に乗り移るなど、日常動作のほとんど全てです。当然ながら一人では何もできません。どの動作にも介助が必要で、介助しやすいようにと移動距離を短くする工夫、例えばポータブルトイレをベッド脇に置いたり、トイレや浴室のリフォームをされた方も居られるのではないでしょうか。また、家族一人での介助が困難なため、一日のほとんどをベッドの上で過ごさざるをえない方も居られるかもしれません。今回はこのような悩みを解決できる移乗機を紹介します。

移乗機とはその字の通り乗り移るための機械です。ベッド、椅子、トイレ、シャワーチェア、車椅子間相互の移動に使用します。介助者は女性一人で十分です。
ここで紹介するのは、有限会社 早川テクノエイド研究所製の『かーるくん』です。
以下の同社ホームページには動画を交えて紹介されているので、是非ご覧ください。
https://ka-rukun.com/

販売価格は少し高価ですが、レンタル可能です。ケアショップから頂くカタログにも掲載されています。うちに出入の方々でも、知らなかった或いは名前は聞いたことがあるが初めて目にしたとおっしゃる方がほとんどでした。まだ認知度が低いようです。

私はこの『かーるくん』を見た時、これこそが探していた移乗のための機械だと思いました。端座位から膝を支点にして上体を持ち上げて移動することが可能で、被介助者の負担も小さいのです。すぐにお試しさせてもらい、導入を決めました。私の場合は手も動かせないので、上体を丸ベルトという棒状クッションで固定する方式KH-3B DXです。

まず、この『かーるくん』の構造について説明します。

図18-1.jpg


図1に示すようにDX型は、直径10cmの双輪、介助者側にはロック機構あり、被介助者側にはロック機構無しのキャスターおよびフットレストが台車に取り付けられています。介助者側キャスターは車輪の回転と軸の回転を同時にロックするトータルロック方式であり、停車時の台車を安定させます。足を置くフットレストもキャスターよりも低い位置に取り付けられています。

被介助者側の横幅は33cmと狭く、四つ足の椅子や車椅子に台車を深く寄せることが可能です。介助者側が49cmと広いのは台車の横倒しを防ぎつつ狭い場所の通過を可能にしています。

この台車上には膝当て、支柱、ハンドル、ペダル等が機構部を介して取り付けられています。そして、上体を立位状態に引き上げる胸当ては支柱に取り付けられています。初期状態での支柱は図1に示す通り40度傾いており、ペダルを踏み込んで立位状態にすると100度になります。立位状態でも胸当ては水平にはなっていないことが図2からも分かります。

図18-2.jpg


次に図1に示す機構部の詳細を図3に示します。ペダルを踏み込むと、ピンがロックペダルの溝に入ることでペダルは固定され立位状態が保持されます。また、ロックペダルを踏むとピンの固定が解除され、立位状態から初期状態に戻すことが可能になります。ペダルは『てこの原理』で支柱を引き上げており、踏み込む力は3分の1程度に軽減されていることが長さの比から分かります。また、支柱を長くするほど立位状態にするために必要な力は大きくなりますが、それが実用的な範囲に収まるように支柱長さや支柱を動かすための金具形状の設計が為されていると思います。

図18-3.jpg


上体を固定する丸クッションは直径10cm程度で、被介助者の両脇に通すと
(20cm)+(両腕幅分)横幅が広くなります。この横幅より狭い場所でも、台車を斜めに入れるなどの工夫で通過できることもあります。

この『かーるくん』で調整可能なのは、膝当て高さ、胸当てです。胸当ては3段階に調整できますが、支柱は40度傾いているために前後位置と高さが同時に変わります。胸当てを低く設定したい場合は、必然的に支柱は短くなります。両者とも体格に依存するので、ほとんど調整余地は無いと言えます。

次に、実際の使用者として気が付いたことや、導入の際に注意しなければならないことを列挙します。

【導入に関する注意】
(使用エリア)
・移動エリアがバリアフリーであること。
・被介助者が端座する場合、膝当てに膝が届くこと。
⇒座面下に車輪が入らない椅子等へは適用困難。
・トイレへの移動では、便器正面からアクセス可能なこと。

(使用上)
・異なる高さ間での移動の場合、低い方に胸当て位置に合わせておく。
・着衣状態では胸当て部でズレが生じ、顎部が圧迫されることがある。
・胸当てを腹部近くにした立位状態では、頭部が腹部より低くなり頭に血が上ることがある。
・手が動かせない病状では、ハンドルを握ることができないため総横幅が広くなる。
・転倒防止の無い椅子等へ座る場合、膝裏の接触で椅子が転倒することがある。
・丸ベルトを外さずに車輪ロックを解除すると、被介助者が前方に倒れる恐れがある。

(その他)
・ホームページには次のような記述がありますが、物理的にはあり得ないことだと思います。私の場合、引き上げ時に丸ベルトが必ずズレます。

図18-4.jpg


ホームページの動画を何度も見ましたが、モデル女性に掛けられた丸ベルトは全くズレていません。私との違いはモデル女性の体型によるもの、あるいは健常者は体幹で丸ベルトを支えることが可能であるとしか考えられません。

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以上のように、移乗機『かーるくん』に関する情報を紹介しました。
両脇を抱えられて移乗するのは介助される側の負担も大きく、さらに一人介助ともなれば危険も増します。被介助者が自立困難となった場合、『かーるくん』を始めとする移乗機の利用をお勧めします。女性一人でも簡単、安全に使えます。

この様な移乗機は『かーるくん』以外にも『ささえ手』など何種類かあります。電動で引き上げる機種もあるようです。インターネットで『移乗機』を検索すると多数ヒットします。きっと自分に合う移乗機があるはずです。



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